さんさか ネルドリップ珈琲と本と

“本物を知るとは、原点を知ること”

洋服の仕事に就いていたこともあり、今でも服飾史(とくに紳士服)に興味があり、つい手が伸びてしまうそんな2冊です。
寛仁親王殿下は皇族で初めて“サラリーマン生活”を送るなど、著書も多く、皇族としては型破りな親しみやすいお人柄のようです。
人や物などいろいろと引き合いに出されて対談されているなかで
「本物とは原点を知ってそれをマスターした上で、その余白をどこか崩すことがお洒落の一部に..」と話されています。
武道の“守 破 離”という教えとも通ずるように、物事の本質を追求すると同じような考え方が出てくるものでしょうか。
 
女子高生でも“ビッグメゾン”の財布などを持っているブランド好きの日本では、
シ○ネルのバッグを持った女性を電車で見かけるようなこともありますが、フランス本国ではそういう姿はまず見られないといいます。
高級バッグを持つ人なら、運転手つきの車での送り迎えが当たり前で、本来そういう方が持つべきものなのでしょう。
また、自分で運転する場合も、女性なら高いヒール、男性も革底の靴では運転しづらいので
そんなときのために素敵なドライビングシューズが作られていたりします。
オペラ鑑賞に出かけるカップルがいて、ディナージャケット(米名タキシード)を着た男性が
ドライビングシューズに履き替えて運転し、女性をエスコートするのがヨーロッパのお金持ちの文化であって
日本のようにモノだけ真似をしても、身につける人の中身とバランスが合っていなければ本当のお洒落とはいえないのでしょう。殿下とも対談されている、皇族関係の注文も仕立てるテーラー「金洋服店」の店主 服部晋さんによる紳士服の話。
生地やディテール、礼服などドレスコードにいたるまで、紳士服の教科書のような存在。
知識として身につけていたつもりの服飾用語が、この本で今さらながら理解できたことがいくつもあり、
洋服屋にいた当時に出会っておきたかったと思いました。