さんさか ネルドリップ珈琲と本と

ぶしつけで恐縮ですが

例えば
スーツのセンターベントやサイドベンツの「しつけ糸」をつけたまま着用している人
を見かけると気になって仕方がない。
スーツというのは当然ながら身体にフィットしていることが前提となるから、ベントとは
着ている最中の身体の動きを逃がしてくれるためにあるスリットのこと。
だから着用した時点でこのベントが開いているというのは、身体にあったフィッティング
ができていないことになり、これではエレガントではない。
本来クラシックなスタイルはノーベントだし、フォーマルな装いディナージャケット(米名タキシード)
もスリットがないが、反対にどうでもいいようなカジュアルなジャケットで、全体に大きなシルエット
ならノーベントということもありうる。
スーツを縫製工場から店舗へ搬入する間、もしくは店頭に並び人の手で商品を出し入れするようになると
このベントがめくれた状態で折りジワがついてしまうと困るので、細い糸でしつけて留めてある。
一目でそれと分かるように、金色の糸で留めてあることが多いのだが、高級感を装うために近頃は価格に
関係なくしつけ糸で留められていたりもする。
このしつけ糸を裾直しが終わり、客の手元に渡る際もつけたまま販売しているお店が思いのほか多くて
当然知らないお客はそのまま着用しているという不細工な話。
 
このようなエピソードは尽きない。
これから冬になると必ず見かけるのがコートの素材表示で、「カシミア100%」なんてのを袖口に着けたままの人がいる。
もっと目立って多いのがマフラーのタグ。
マフラーを巻いた際、わざわざご丁寧にも表正面にブランドのタグを見せている人が多いのなんの。
いつになったらこの姿を見なくなるのだろうかと冬が始まる度に気に病む。
こんな風に言わなくても良いことを言って多少後悔することもあるのだが、それでも言いたいことがある。
言わなければならないという義務感にも似た老婆心を抱えて仕方がない。
 
本丸はオロビアンコのバッグに着いているリボンが気にいらない。
バッグをお持ちの方、名指しをしてごめんなさい。
若い人の持ち物をどうこう言うつもりはない。
あのイタリアンカラー3色のリボンの正体は、百貨店など店頭に並ぶ際、
「これオロビアンコの品物ですよ!どうぞ見てって!」っていう、競合するブランドより目立つための客への訴求な訳です。
僕らが若い頃で言うと、フェリージのバッグの革製のタグも同じ。
旅行鞄にぶら下がってるような、名前とか住所を書き込めるような名札ならまだしも
何の意味もないタグを自分の所有物となったあともいつまでぶら下げとるんじゃいっていう話。
 
このことをどう言えば格好悪いか分かってもらえるだろうかと、ずっと考えていて思いついた。
自動車で例えるなら、新車の発表会やモーターショー、あるいは販売店に並ぶ展示車両のナンバー
プレートのところに、「TOYOTAカローラ」とか「日産マーチ」とか書かれたプレートが納まってい
るのはイメージできるかと思う。
そのプレートをつけたまま、街なかを運転しているようなものだというと、どれほどおかしな事か
分かってもらえるはず。

格好いいと思ってつけてる人は勝手にすればいいのだが、みんながつけてるからそういうものだと
感じてつけたままにしている人は今すぐにはずした方が良い。
日に灼けて色褪せていたり、雨に濡れて色が滲んでいるリボンなんて捨てて街へ出よ!