さんさか ネルドリップ珈琲と本と

百歩譲る

読まず嫌いだった松浦弥太郎さんの本を少しずつ読んでいる。
「暮らしの手帖」編集長、「COWBOOKS」代表、書籍商で文筆家。
肩書きが多いのがなんだか胡散臭くて敬遠していた。
年末に沢尻エリカとようやく離婚した高城剛さんが自分のことをうまく表現している。
「ハイパーメディアクリエイターという肩書きが、何を生業としているのか分からず、世間では胡散臭く思われ好かれていない」と。
松浦氏のこともそれに似たようなもので、何をやっている人なのか判然とせず、あまり食指が動かなかったのだろう。
でも読んでみると、自営業という共通点があるからだけではなく、大事にしている価値観が案外同じようなこともあったり
見習うべきこともたくさんある。
 
最低で最高の本屋 (仕事と生活ライブラリー)
「最低で最高の本屋」では本を扱うようになったいきさつや、仕事の仕方についても書いてある。
いい考え方だなぁと思ったのは、戦うより譲るということ。
自分自身との戦いはしても、誰かとの競争はできるだけしないようにしているのだそう。
力がぶつかり合う戦いは消耗するだけだから、戦わなければならなくなったら身を引く。
誰かに勝ったとしても、得られるものって案外少ない。
戦うことで傷つけあうことの方がダメージが大きい。
力で差を見せつけあうようなことはしたくない。
それだったら、百歩譲る。
譲ってもたかが百歩。
百歩くらいなら先に行かれても、相手の背中はまだ見えるだろうから、そんな大した差はない。
無鉄砲に戦って、結局勝ったとしてもむなしい思いをするだけ。
勝っても負けても得るものには大した差はないはず。
何かを犠牲にして、ボロボロになってまで仕事をしたくない。
 
さて自分はどうだろうかと考えると、勝負相手の退路を断つような、息の根を止めるような圧倒的な勝ち方を狙う悪い癖がある。
自分が正しいと思うときは、絶対的に優位に立とうとするから、余計にたちが悪い。
自戒の念をこめて、先月お亡くなりになった吉野弘さんの詩を。
  正しいことを言うときは 少し控えめにする方がいい
  正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと
  気付いている方がいい (吉野弘祝婚歌〜より)