さんさか ネルドリップ珈琲と本と

イギリスはおいしい?

イギリスはおいしい (文春文庫)

「イギリスの食事は美味しくない」というのは世界の定評である。
イギリスに行ったことはないけど、どういうわけだかそのイメージしかない。
どこか外国でカメラマンをやっているはずの同級生から、イギリスに語学留学みたいなことで
滞在していた時の食事のことを聞いたことがある。
味にうるさいほうではなく、どちらかと言えば無頓着だと思われるその友人でさえ、ハードロックカフェ
マクドナルドならマシなほうで、例のフィッシュアンドチップスにも閉口気味に話していた。
もちろん財布との相談だろうが、若者が行く店に限って言えばそれほど極端な話でもなかったそうだ。
 
どちらだったか覚えていないが、映画監督の伊丹十三か服飾評論家の林勝太郎のエッセイで
イギリスではアフターヌーンティーでミルクティーとともに、イールパイを食べるというのを読んだ記憶がある。
浜松土産のうなぎパイのようなサクッとしたお菓子とはもちろん違う。
キッシュみたいなパイだかタルト生地の中にぶつ切りにしたウナギがゴロッと入っているらしいのだが
想像できうる範囲でだがそれは勘弁してくれと思う。
 
また別のコラムで、イギリス人に外国人が美味しくないと思っている食事について聞くと
「レストランで食事するより家庭で母親や妻が作る料理の方が美味しい」とかいう理由で
外食は美味しくなくても当然だそうだ。なんだか訳の分からない話だ。
とにかく評判の悪いイギリスの食事について書かれた
この本ではそんな疑問を面白く解決してくれている。
 
イギリス人は塩気に鈍感ということと、テクスチュアに無神経だということが大きな欠陥だそうだ。
特にテクスチュア、食感・歯触りについては、こと日本人がうるさいらしい。
たしかに「ふわっ」「とろっ」「シャキシャキ」「サクサク」など表現する言葉が数多くある。
対するイギリス料理は食感には関心がなく、特に野菜のテクスチュアに信じがたいほど無頓着だそうだ。
イギリスの家庭で野菜を調理するといったらとにかく茹でるのだとか。
どんな野菜でも延々と、呆れるほど長時間、時には重曹を加えて茹でるらしく、クズクズに崩れるまでに。
微妙な食感の違いや塩加減に憂き身をやつしているフランス人や日本人などに対して、反感や軽蔑の念さえ抱いていることもあるらしく、
「料理なんてものに大切な時間や神経を浪費するなんてばかばかしい」とまで英国婦人に言われたこともあったそうだ。。