さんさか ネルドリップ珈琲と本と

本屋さんの役割

大型書店に町の本屋さんや古書店、それから今ではネット販売も“本屋さん”に違いない。
古書店を営む知人などは、「一箱古本市」と言ってダンボール一箱で全国各地を飛び回り
京都でも叡山電鉄の車両での古本市イベントや、カフェなどの店内でも販売を手がける「どこでも本屋さん」。
“本屋”というと、ブックディレクターという肩書きの人や、本を売る人のことをさして“本屋さん”という場合もある。
うちの店もごくまれだが「いま、本屋さんにいる。」と、電話している人もまあいたりもする。
 
いまから言う本屋さんとは「リアル書店」のおはなし。
書店でよく見かける手描きPOP。
思い入れのあるメッセージなど、効果的な販促ツールとして、ヴィレッジヴァンガード
遊び心たっぷりのそれが有名だけど、一般的な書店で多用するようになったのはここ10年ほど。
それが今では、「書店発のベストセラー」をウリにして、本の帯に「○○書店の△△さんイチオシ」
なんて書かれるまでになっている。
これって結構すごいことで、以前は「書店は配本された本をただ並べて売るだけでいい、広告や販促は出版社がやる」
極端な物言いだけど、そういう姿勢の出版社が多かったのも事実。(こういうところも出版不況の一因かと)
この書店員さんたちの前向きな姿勢が、本屋大賞の創設につながったと言っていいと思う。
 
書店員が本当に売りたかった本
この「書店員が本当に売りたかった本 ジュンク堂書店新宿店」は → → →
昨年3月で閉店したジュンク堂新宿店が、閉店までの残りの数週間
「最後に自分たちが本当に売りたい本に、手描きPOPをつけて売ろう!」という最後のフェアが
ネットを介して話題になり、大成功を収め惜しまれつつ閉店した際のPOPが収録された本書は
最近ちょっと流行りの書評本とは一味違った面白さがある。
いまは買いたい本が決まっている時は、ネット書店を利用することも多いのだが
このアツい思いの手描きPOPには心を動かされるし、リアル書店の役割というか意義が実感できる。
 
ちょっと言いたかったことがもう一つ。
ガイアの夜明けというテレビ番組で、代官山で話題の大型書店のコンシェルジュについて放送していた。
旅行書籍担当のコンシェルジュの男性は、元トラベルライターをなさっていたお方。
企画として世界遺産熊野古道を特集した本棚をつくるにあたり、資料集めに現地和歌山の書店に。
大型書店ではなく町の本屋さんなのですが、地元でしか集まらないであろう熊野古道に関する蔵書のコーナーの前で
このコンシェルジュの男性は、近くにいる店主を横目に堂々と書籍タイトルをメモしながら
「この本棚よりもっとすごいのをつくろうと思います。」というロケ映像。
テレビなので前後のやり取りなど編集されているであろうし、客商売の経験が浅いこの男性とはいえ
思いやりがなく、まったく配慮に欠ける発言にはゾッとした。
この書店の企画で、件のコンシェルジュの方と熊野古道を巡るツアーの募集を目にしましたが
まあ兎にも角にも、頑張ってる本屋さんを応援します。
それとターミナル駅の書店員さんは道案内が多くて大変らしいのだが
携帯電話ショップを尋ねられたりは仕方ないにせよ、「古本屋は近くにない?」と聞かれたというのが
一番の屈辱だったというのはよくわかる。
うちの店でも、「この辺で300円くらいで珈琲飲める喫茶店ない?」と聞かれたことがあるのも笑えない事実。
倦まず弛まずです。