さんさか ネルドリップ珈琲と本と

季節はずれの甲子園

プロ野球のドラフト会議の報道を見て思い出した。
阿久悠さんが新聞連載で高校野球のことを書いていたことがあった。
日本人はとにかく高校野球が好きだということ。
夏の甲子園は全試合が生中継されるし、どういうわけだがNHKと民放の2局で放送している。
もうそろそろチャンネルを2つも奪うのはやめてはと思うのだが
春夏それぞれの大会を新聞社が牛耳っているので仕方ないか。
高校野球を観なくなって久しい。
PL学園に清原・桑田のスーパースターがいて、べらぼうに強かった頃は子供ながらによく覚えている。
そのPLが夏を制覇したときの大会で対戦した、相手校の校長が2軒隣のおじさんだったから余計に覚えている。
でもいつの頃から全く観なくなったなぁ。
子供の頃は自分よりずっとお兄さんである高校生がいつの間にか年下になり
今では自分の息子とまではいかないものの、彼らの倍以上も年をとっているのだから、関心がなくなるのも当然か。
 
先日、読まず嫌いをしていた「もしドラ」を図書館で借りて読んだ。もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
販売部数が250万部を超えるそうだが、著者は最初から300万部を目標にしていたそうで、大ヒットも当然のことだとか。
アニメチックな表紙がどうしようもなくアキバ文化的で、手に取らない類の装丁の本だったけど
意外にもというと著者に失礼だけど、これが面白かった。
昨今の消費社会は子供の天下だから、消費のターゲットを完全に子供に向けた装丁も著者の思惑どおりなんだろう。
 
ドラッカーのマネジメントを読んだ、都立高校野球部の女子マネが、甲子園に連れて行くとか行かないの話で
とにかくあり得ないほど都合よく話が進んでいく。
とくに、すぐさまドラッカー著の「マネジメント」に出会うところなんかは、考えられないほど都合よく展開していく。
その主人公の女子マネが「みなみ」という名前。
高校野球を題材に、双子の兄弟とその幼馴染の女の子が甲子園を目指す、
“♪ 呼吸をとめて一秒..”も、ご存じ「みなみ」とくるから非常に分かりやすい。
 
女子マネが部員や監督と面談したり、目標を設定して強くなっていく夢のような物語なのだが
企業の社員研修や評価査定で用いられるPDCAを思い出す。
Plan計画→Do実行→Check検証→Action修正
みんながこのとおり仕事をしていれば、きっと上手くいくであろうかのような、夢のサイクルである。
組織において周囲の人たちを巻き込んで、良い方向に動かそうとする際
他人の意識を変えることは難しいから、まず自分が変わらなければならない、という風なことが分かりやすく書かれている。
きっとサッカーでもバスケでもなく、高校野球じゃなければ売れる本としては成立しないんだな。