さんさか ネルドリップ珈琲と本と

センスの良し悪し

センスは知識からはじまる
ラーメンズの2人と同じ美大出身の水野学氏が彼らのコントライブのポスターなどのデザインを手がけていたのは
舞台公演を欠かさず観に行っていたのだから、もう15年も前のことか。
くまモン」生みの親としてだけでなく、今や超売れっ子の人だ。
その水野さんが考える「センスとはなにか」
特別な人だけに備わった能力ではなく、やるべき事をやり、必要な時間をかければ誰にでも手に入るものだと。
 
たまたま目にしたこの本の読者レビューに、「先輩デザイナー誰某が言っていたことの焼き直しみたいで新鮮味がない」
みたいな事を言う人が複数いらした。
そんなこと自分は知っていますよというひけらかしは格好良くない。
こういうことこそ「センスがない」と言うのではと思う。
センスのいい人っていうのは、自分に必要だと感じる本質をどこかの誰かの言動から
上手く取り入れることができるのだと思う。
いつの時代、どの分野でも第一線で活躍されている人が考えている、根底にある本質はだいたい同じだと思う。
映像の美術分野で世界的に活躍されている美術監督がイメージを膨らます際
古今東西の写真集や画集などの膨大な資料をヒントに脳内検索をして、既存のイメージを今に合うように最適化する作業をしていた。
続けて「若い人ほど全く新しいイメージを求めがち」と。
 
水野さんが考えるセンスとは「ものごとを最適化する能力」
立ち読み、斜め読みも含めた読書がセンスの幅を広げ、血となり肉となり結果として最適化に役立つと。
そうした最適化したセンスこそがデザインの源だそうだ。
インプットがなければアウトプットもないというわけだ。
いつも思うのは、食事をしたくらいで写真を撮ってはどこかの誰かに発信しているようでは
インプットとアウトプットのバランスが悪い。
もっと本を読んだり映画を観たり、たくさん吸収して咀嚼して血肉になってから
自分の言葉で、自分の責任で話せる人を尊敬できるし信頼に値する。
 
先日、洋服屋を営むご夫妻とお話していたら、同業の先輩から言われた言葉として
「開業して最初の3年はなんとかなるが、その間、忙しく過ごして何も吸収しない
 ままでいると、出し切って空っぽになったその後が苦しくなる」と。
それまで経験してきたことで得た蓄えを一気に使い果たしてしまうのだろう。
デビューアルバムが大ヒットしたミュージシャンや、処女作で大きなタイトルを受賞した小説家も
それを越えられずに苦しむことがよくあるのと同じだろう。

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションをいう」
逆説的だけど、アインシュタインが残した言葉。
なるほど、いいこと言うじゃねえか!