さんさか ネルドリップ珈琲と本と

物語に拳銃が出たら発射されなければならない

銃 (河出文庫)
中村文則 1977年生まれ
この「銃」で2002年、新潮新人賞を受賞(芥川賞候補)
2005年「土の中の子供」で芥川賞、2010年大江健三郎賞など受賞歴の割には
知名度が低いような気がするが、すでに海外でも評価されているようで。
 
まわりとの接し方が冷ややかな男子大学生が、偶然銃を手に入れることから始まる。
生きがいなど見出せなかった彼が、銃を手にしてから変わっていく。
銃の機能美に見惚れ、所有しているだけでこれまでの景色が違ったように見えてくる。
そして撃ちたいという衝動にかられる。
いつしか圧倒的な銃の存在感に取り込まれていってしまう...
 
芥川賞直木賞の境界は選考する側からも難しいようだけど
この「銃」が芥川賞候補になるということは純文学だ。
前半は徹底的に一人称、“私は〜”で書き綴られる。
1行に2度使われることもままある。
この文章を読みすすめていくと、次第にというか早い段階で
“私は”が自分のことのように入り込んでくる。
文字の力とか、文章に操られる怖さを感じる。
このところ読書量は増えているが、小説をほとんど読んでいなかったので
中村文則をいくつか読んでみようと思う。
 
この中村文則ピース又吉がずいぶん前から薦めていた作家さんで、又吉の本でも対談をしていた。
中村さんの著作の帯に、「又吉お薦め」と書かれていたり、又吉の写真つきのPOPなども
以前は書店で目にしたが、これも人気商売で、最近は「綾野剛推薦」に取って代わっている現実。